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<Destiny 2>Bungie過去作『Marathon』との関連を探る<考察>

以前書いたMarathonからDestinyを読み解く作戦

 

Marathonとの関連を示す伝承

経緯は以前の記事をご覧ください。

今の所見つけた情報はRedditより

www.reddit.com

 これは恐らくMarathonユニバースとの関連を示唆している。K'lia(クリア)はLh'owon(ロウォン)の月で、AI Thoth(トート)から返される前に、星の中を彷徨うために送り込まれた。AI Thothの目的はW'rkncacnter(ウィーケンター?)を捕らえることだった。そしてそれこそがトラベラーのうちの一つであると考えている人がいる。

 意味が分かりません。調べてみた所、ロウォンとはMarathonの舞台となる惑星の名前。クリアはその月だと言います。ウィーケンターという謎の闇勢力を抑え込むために太古のAIであるトース?が活動しているそうです。これだけ知っても不明ですが、この情報を出発点に『Marathon』について調べてみました。

 

 

 

Marathonのあらすじ、プロット

MarathonBungieが1994年に発売したシリーズです。FPS黎明期の作品でありながら、その奥深いストーリーは話題を呼び、名作と言われています。

Marathonはすでにオープンソース化されていて、3作すべて無料で公開されています。日本語版も出ているのでプレイ可能。気になる人は調べてみてください。私は最初のMarathonを少し触ってみました。昔のFPSって感じで新鮮でした。私はその時代のゲームを全然知らないので。しかしその濃い世界観やゴリゴリのハードSFさは当時から現れていて、その後Halo、Destinyとその思想は今も廃れていないようです。少しプレイしたというものの、本当に序盤の少しだけです。慣れていないのか、なかなか思うようにプレイできず、なかなかこれを攻略する時間も気力もないので、妥協してネット上の情報からヒントを得ることにしました。このシリーズに関してはFANDOMで専用のページがあるので、情報は得やすいと思います。

 

先述したRedditの投稿の件です。90年代後半のゲームの世界観を知りながらDestinyをプレイされているという事は、結構なBungieファンだと推察します。彼の情報を頼りに、出てきた単語を追いかけます。

 

以下あらすじ

 

西暦2794年。

タウ・セティ星系第四惑星に植民するための拠点として活動している巨大な宇宙船「Marathon」が本作の舞台。主人公は任務を終えMarathonへのドッキングを求めていた所、Marathonを管理する3基の人工知能のうちの1基であるDurandal(デュランダル)に突如攻撃を受けます。なんとか脱出しMarathonに乗船した主人公が目にしたのは、Marathonが地球外生命体Pfor(プフォール)に侵略を受けている様子でした。Durandalは船の大部分を管理していましたが、侵略の影響か暴走してしまいます。

 

最終的にデュランダルは正気を取り戻し、プフォールから奪った船に乗ってプフォールに隷属していた種族、スプトの星を目指します。その母性こそがロウォンであり、その月がメデューサが言っていたクリアです。なんやかんやあって3作目では、プフォールに隷属していた種族であるスプトの神話を主軸に話が進むそうです。「ロウォンの系にある太陽には太古のAIであるトートによって W'rkncacnter(ウィーケンター)という存在が封じ込められている」とのこと。

 

重要そうなのは最終作である『Marathon Infinity』のプロットです。ここではウィーケンターがプフォールの兵器によって解放されてしまい、その結果全宇宙に混沌が蔓延することになりました。その結果か、宇宙は無数の世界に分岐したらしく、プレイヤーはその幾千の世界を旅することになるそう。時間軸を移動しウィーケンターを止めることには成功したみたいです。そしてMarathon Infinityの重要な部分は、シナリオエディタを配布しプレイヤーにそのストーリーを派生できるようにしたこと。そういったサードパーティの世界も含めてプレイヤーは旅をしたわけです。

 

 W'rkncacnter(ウィーケンター)

日本語発音は不明ですが、動画などで英語圏の方が「ウィーケンター」という風に発音していたので、ここではウィーケンターとしています。

この存在はかなり引っかかります。というのもこれはある体系を持たない概念的な存在であるとされていて、それが解放されると周りに混沌が広がり、銀河全体に影響が出るのだとか。ウィーケンターは太古のAIトートによって封じられていますが、クリアはそのために用いられた衛星らしい

 

ウィーケンターと暗黒

私はウィーケンターを知ったときに暗黒を思い出しました。暗黒は人類の黄金時代を破壊し尽くし、人類は散々な目に逢いました。アウォークンがディストリビュータリーに飛ばされたのもトラベラーの光と暗黒の接触でした。

暗黒の正体は不明です。私はトラベラーを追う地球外勢力の侵略のメタファーであり、人類は急激に衰退したので情報は失われ、その出来事そのものが暗黒という概念で語られるようになったものだと解釈していました。

しかしマラセンナの伝承『回る宇宙』を読むと暗黒について詳細な描写があります。暗黒はあたりを包み込むように広がり光を遮る暗闇で、とてつもなく強力な重力場を持っています。それは形のない存在であるらしいという点でウィーケンターと似ていないとも言い切れません。

 

K'lia(クリア)

肝心のクリアについて。クリアはウィーケンターを封じ込めた超知性、ジャロが作りました。ロウォンの3番目の月として周回軌道上にいたそうですが、かつて戦争から逃れるためにジャロによって宇宙に送られます。トートはその後ウィーケンターの開放を阻止するためにこのクリアをロウォンに呼び戻しました。この衛星はウィーケンターを封じるための一定の機能があるらしい?この点については不明確です

 

ここで前回引用したメデューサの発言を再び見てみます。

1. 「夢見る都市」はより大きな世界を模して作られた。そこはアウォークンにとっては失われた地だったけど、彼らがそれを忘れたことはなかった。私がかつて&_>>>「故郷」と呼び、故郷として召喚したクリアと同じよ。

 クリアは太古のAIトートが送り込みました。トートはジャロと呼ばれる銀河の超知性によって作られ、その後クリアに住むスプト・カーに授けられます。 クリアがロウォンに呼び戻されたのはウィーケンターにより生まれた異なる時間軸において、デュランダルがトートと融合した後での出来事です。この出来事から考えると、クリアを呼び戻した事が召喚なのだとすると、メデューサの語り口はトートと重なります。しかし故郷と呼んだという部分についてはクリアに住むスプト・カーだと考えられます。

そして文脈上、「~~召喚したクリアと同じよ」は「○○にとっては失われた地だったけど、彼らがそれを忘れたことはなかった」に掛かっています。つまりMarathonにおいてこの文脈に当てはまるのは、スプト・カーだと考えられます。別の時間軸(これについては後述)から来たジャロのAIなのでしょうか?直接的に世界が共通していることを示しているのではなく、単に過去作との関連を暗示させるだけなのでしょうか。メデューサの正体が何とも言えないうちはこの発言の真意については分かりません。

 

ここであることに気が付きました。

DestinyとMarathonの対比

トートはジャロによって作られ、スプト・カーに与えられました。スプトの氏族間の戦争から逃れ忘れ去られたスプト・カーを乗せたクリアは、ジャロによって飛ばされ宇宙を彷徨うことになります。その後デュランダルと主人公の行動によりスプトが解放される兆しが見えると、太古のAIトートによりロウォンに呼び戻されスプト解放に加勢します。

クリアが離れたのは戦争から逃れるためでした。これをDestinyにおけるアウォークンとメデューサに当てはめてみます

トラベラーに依存しない道を探すため、太陽系を脱出しようと試みるグループ。彼らが乗る船にはAIであるメデューサが搭載されていました。故郷を離れ航行しているとき、暗黒に包まれ、それを止めようとするトラベラーの光との衝突によって生まれた特異点に吸い込まれ、異世界であるディストリビュータリーにたどり着きます。アウォークンはそこで長く繁栄しましたが、故郷である地球が侵略を受けている事を聞き、救援するためにディストリビュータリーを出る決断をし、太陽系に戻ります。

 

説得力を増すために、マラセンナ『冥界へ』の一部を引用します。

「(~略)我らは難民であり、祖先たる文明と侵略者の間で繰り広げられた、世界の終末とも思える戦いより逃げたのでした」マラは視線を落とした。「そして回収した信号によれば、我らの祖先らは敗北の淵、あるいは絶滅の危機にあるとのことです」

「我らは己の借りを受け入れるべき時が来ました。傍流の地は生来の権利で得たものではなく、身を隠すための場所なのです。維持するための庭園ではなく、力を蓄えるための拠点だったのです。アウォークンよ、貴方に問いかけます。私とともに、我が民がこれまでに直面したもっとも厳しく、もっとも相応しい試練に加わっていただきたいのです。我らの天国たる地を離れ、祖先らの世界へと戻り、そして彼らが放棄した仕事を担いたいのです。もし彼らが少しでも生き残っているのであれば、彼らに手を差し伸べねばなりません。彼らに敵が居るのなら、我らの力を分け与えねばなりません。我らが逃げ出した戦いに舞い戻り、そこで我らの敵と対峙しなければならないのです」

 どうでしょう。スプト・カーとトート、アウォークンとメデューサの立場がよく似ていると思いませんか?両者とも戦乱を逃れて逃げました。最終的には故郷の戦いに加勢するために元の居場所へ帰っていくわけです。更にいえばスプト・カーに与えられたトートは、アウォークンを見守るため船に搭載されていたメデューサと重なります。直接的に両作品のつながりを明示する事象ではありませんが、スプト・カーはアウォークンのストーリーのモデルになっていたのかもしれません。つまりスプト・カーが住んでいたクリアは、アウォークンがたどり着いたディストリビュータリーに置き換えることが出来ると思います。

 

運命(Destiny)

上記の関連性についてネットサーフィンをしていると、同じ切り口でDestinyの世界に迫る人は何人かいました。そうして探しているうちに、Marathon Infinityのエンディングで、デュランダルが主人公に送った文章に着目している人を発見しました。幸いに翻訳された文章も見つけたので、引用します。

君は何千回もの死を経験してきた。絶望的な戦いの中で勝利を収めた。

遠い昔に死んだはずの人間。君は、君の創造者が理解することのできないような機械類に融合された。

君こそ、その道を歩んでいる。永遠の様相を呈しながら、意のままに操作し、破壊し、蘇らせる。

今、すべてが一つになる終焉の前の量子的瞬間。残された一瞬。空間と時間が一点に結ばれるとき。

私は、君が何者であるかを知った。

君こそが、すべての運命(Destiny)なのだ。

 鳥肌が立ちましたね。ここも、先程やったように置き換えてみると、主人公がガーディアンと似た境遇であることがわかります。

Marathonの主人公はサイボーグだそうで、ウィーケンターが解放されてからあらゆる世界を旅する過程で何度も死に、最終的に収束する道を見つけました。

ガーディアンもまた遠い昔に死に、創造者、つまり神が理解することが出来ないような機械類(トラベラー)に融合(ガーディアン化)されました。時空の終わりまで存在するガーディアンは、永遠の様相を呈し、意のままに操作し破壊し、蘇ります。

Destinyの原点はここにあったんでしょうね。恐らくここからDestinyシリーズの着想を得たのでしょう。

 

結論

このようにMarathonへ遡ってみると、Destinyのモデルになっているように思われる要素がありました。1994年に始まったこのシリーズがDestinyの原点になっています。当時からストーリー重視のFPSを作ってきたというBungieのアイデンティはその後Haloシリーズを経て、間違いなく受け継がれています。

 

結果的にDestinyとMarathonの関連性は示唆されているものの、直接的にDestinyにつながる証拠は見つかりませんでした。

メデューサの正体につながる情報も見つけられませんでした。

しかしもしかするとHaloやDestinyの世界は、ウィーケンターが解放されたことによって生じた無数の時間軸のうちの一つであるのかもしれません。

スプトの神話で語り継がれたように、太古から存在する超知性であるジャロと、銀河に混沌を招くウィーケンターの対立と同じような構造がDestinyの世界でも起こっているのでしょうか。

暗黒はウィーケンターなのでしょうか。そしてトラベラーは、ジャロによってウィーケンターを止めるために作られた巨大な兵器なのでしょうか。それらの関連は明言出来ませんが、可能性は依然捨て切れません。

中にはトラベラーこそがウィーケンターであると考える人もいるようです。

google翻訳レベルでもある程度情報は得られるし、Marathonシリーズは情報量が多いので、気になった人調べてみると良いと思います。なかなかおもしろかったです。