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Borderlands 3  レビュー

レビューしてみる。レビューになってるか分からんけど。途中からネタバレを含むので未クリアの人は途中までで

 2012年リリースのシリーズ2作目を最後に、大凡7年ぶりの待望の新作となるのがこのBorderlands 3 。ランダム生成の銃とスキルベースのキャラクターで好きな特徴を持ったキャラを組めるRPGライクな育成システムは当時としては大変画期的で、ルートシューターの元祖と名を持つのに相応しい名作となった。なお筆者はゲームの価値を決めるために点数をつけるという事にやや抵抗があるので点数はつけないでおく。その点留意されたい。またどんなやつが書いているのか分かるように私のBorderlands 歴を羅列する。

1作目をサクッとプレイ。Co-opを楽しみエンドコンテンツはほぼやらなかった。2作目は一通りプレイ。3キャラくらい作ってビルドをしエンドコンテンツもそれなりに遊んだ。Pre-Sequelは2周めを少しプレイした程度。

 

 

シリーズの基礎

Borderlandsシリーズは元々PS3で発売されている。Borderlands のユニークな点としてそのグラフィックが挙げられる。本シリーズはその他のAAA級ゲームと違いカートゥーン調でアニメっぽいグラフィックとキャラデザインを持っている。これは当時このスタジオの技術では高グラフィック分野でなかなか敵わなかったので、あえてこのようなグラフィックを作り特徴づける狙いがあったと言われている。初代が発売された2009年後半~2010年前半あたりに発売されたゲームを見てみると『Assasins Creed II』や『Call of Duty : Modern Warfare II』等がある。どちらも当時としては最先端クラスの高品質なグラフィックを持っていた。同シリーズの制作をしているGearboxSoftwareがBorderlands を発表するまでに開発したゲームを見てみるとそれほど知名度も無いマイナーなものや、人気ゲームのリマスター版などの制作をしていたようだ。GearboxにとってBorderlands は社運を掛けた画期的な全く新しいプロジェクトだったのだろう。大作を当てた実績に乏しいGearboxにとって、やはり高品質なグラフィックを実装するのは難しく、高品質でない路線であまり”低グラ”を意識させないグラフィックの開発を初めたのだろうと想像ができる。

 

Borderlands 3 で正当進化したアクション

ここからレビューらしくしていこう。Borderlands といえばメチャクチャでネジがぶっ飛んだオカシイ世界観、それらを無数の銃とスキルでぶっ壊しに行く爽快感が特徴だと思う。いい銃を見つけてしばらく使っているとまた新しい強い銃が拾える。RPGベースの育成システムもあってキャラがだんだん強くなっていくのが実感できた。一周目でパーティ感を満喫できたかと思うとクリア後の二周目では難易度が跳ね上がりしっかり考えてビルドを組まなければ攻略が難しい硬派なゲームに様変わりするのだ。

 

Borderlands 3 ではそんなBorderlands のアクションのDNAをしっかりと引き継ぎ、待望の続編として大幅な新要素が加わるのでなく、”ちゃんとした進化”を果たしている。今回の戦闘は前作より幅が増えとにかく”タノシイ!!”

例えばスライディングは小さな隙間をスタイリッシュに抜ける移動用としての動作のみならず、カバーに滑り込むことで被弾を避けることが出来るし後述のバレルにもアクションが出来る。またスライディング中のみ効果が現れるような装備効果もあるようだ。壁をよじ登れるようになったのも嬉しい。ジャンプじゃ届かない微妙な段差によじ登れるようになったので、前作より高所に行きやすいようになっている。高所に行けると新要素スラムを使える。このスラムはPre-Sequelのものとは違い、近接武器を振り下ろし周囲に衝撃を与えることが出来る。こちらも新たな装備により効果を追加することが出来、例えばスラム後にダメージエフェクトを残留させるものやキャラにシールドを追加することも出来る。

バレルを戦闘でより有効活用しやすくなった。バレルに向かって近接攻撃またはスライディングを当てると進行方向に向かって飛ばすことが出来る。これによってより戦略の幅が増え、効果的に大ダメージを狙えるようになった。

 

より深化したグラフィック

前述したようにグラフィックの進化に追いつけなかったGearboxは独自のグラフィックで独自性を追求した。Borderlands 3 でももちろんそのグラフィックが採用されていて、馴染みのあるアニメっぽい画面に安心感すら感じる。しかし前作を当てまくったGearboxはただ同じグラフィックを再現するだけに留まらない。光のエフェクトはより綺麗になっているし、それによって異なる惑星でそれぞれ独自性のある空気感を見事に演出している。パンドラは本当に乾いていそうだし、プロメティアはネオンが綺麗な夜の街。エデン-6はどんよりした沼地らしく居心地が悪そうだ。このようにゲームのグラフィックでより深化した表現をうまく出来ている。

 

多様性のあるキャラクター

これまでのBorderlands では一つのアクションスキルにちょっとした変化を加えるものだった。しかしBorderlands 3 ではこのスキルシステムも深化している。今作では基本となるアクションスキルが3種類も存在し、しかもそれぞれにツリーに応じたオーグメンテーションが存在している。私はFL4Kを使っているのでFL4Kを例に取る。

FL4Kには3種類のペットがいる。スパイダーアントのブルードレス、スキャッグのミスター・チュー、ジャバーのミートシーフだ。それらのペットを常時同行させることが出来る上に、アクションスキルも3種類ある。ラックを召喚し敵を襲わせるラックアタック、ペットを任意の場所にテレポートさせ強化するガンマバースト、自身が姿を消し全部位クリティカルヒットを実現するフェイドアウェイがある。それぞれペットに異なる強化を施すオーグメントスキルがあるし、例えばラックの属性を変更したり数を増やしたり出来るオーグメントもある。このようにスキルシステムではより多様性が増し、一つのキャラでも出来る事が増えている。

しかし現状はFL4Kとアマーラの二巨塔らしく、現時点でモズとゼインはコミュニティによる最強ビルド模索中の段階らしい。この手のゲームではやはり開発の想定通りには行かず、プレイヤーは必ず尖った強ビルドを探してくる。全キャラが一通り強く平均化されるまでしばらく時間がかかりそうだ。

 

 

シリーズ新規プレイヤーにはちょっとオススメし難い

この問題はとても根深い問題で難しい。Borderlands はストーリーがしっかり作られている連続ものだ。ゲームの歴史はそこそこ長く、初代が発売されてから10年ほど経っている。いきなり3をやって話が理解できるのかという問題になってくるが、はっきり言って難しいだろう。一応これまでのあらすじということで公式がまとめ動画を出しているので、それを見ればなんとかなるだろう。しかしキャラクター同士の関係性や小ネタまで及んでおらず、シリーズ未プレイの新規プレイヤーはストーリーをやっていて自分が蚊帳の外に置かれている感覚になることは正直否めない。ルートシューターとして楽しむことは十分に出来るだろうが、やはりストーリーや小ネタを知っている事で加味される楽しさというのはあるはずなのだ。もし今作から初めたとしても、ハマれば知ろうとするだろうからそのうちどういう世界観なのか分かってくる事だろう。

 

 

 

 

これより以下はストーリーのネタバレとなるので未クリアの方は注意。

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ストーリーは高揚感が高いが演出力に欠ける

ネットの意見を見ているとストーリーがイマイチという声が時折あるようだ。

あらすじは簡単に言うと「クリムゾンレイダーがヴォルトを探すためパンドラを離れているうちにチルドレン・オブ・ヴォルトというカルトが現れ大変なことになってる」となる。

悪役の二人は姉弟で、二人共セイレーンとして特殊な力を持っている。姉のタイリーンは生き物から命を吸収する力を持っていて、ヴォルトモンスターを吸収する事で宇宙最強の存在になろうとしている。その過程でリリスはセイレーンとしての力を奪われてしまう。COVに対抗するために各地の仲間に協力を呼びかけていくいわゆるオールスター系の展開になっている。その過程でゼロとマヤも登場し、歴代ファンの心をつかむ。またまさかのタニスがセイレーンだったという衝撃の事実も判明しもはやパーティ。他にもジェイコブスの社長が出てきたりするし、ストーリーのコミカルな小ネタもやはり楽しいもので攻略していて飽きを感じさせない。

そうして各地で仲間を集いCOVと決戦を果たし弟を討ち取るが姉の討伐には失敗。ここからが怒涛の展開で、実は巨大なヴォルトだったパンドラを開こうとするタイリーンを止めるため伝説のヴォルトハンターで実はタイリーンの父親だったタイフォン・デ・レオンと協力する事になる。タイフォンは我が子を化け物にしてしまった罪悪感の中で死に、その遺志を継いだヴォルトハンターがいよいよタイリーンを討ち取るがヴォルトの開放を止めることが出来なかったので、力を取り戻したリリスが自らの命を犠牲にグレートヴォルトの開放を阻止したというのが今回のストーリーだ。またセイレーンが死後他の人物に力を与えるという役割も言及され、マヤの死後エヴァという少女が新しいセイレーンとなる。

力と仲間を失い喪失感に駆られるリリスとその復活劇であると同時に、親の曲がった愛に苦しみモンスターとなった壊れた姉弟や、死んだ恩人の遺志をついで新しいセイレーンになるエヴァと、このようにいくつかのプロットや要素が重なっていて、物語はただ悪役を倒しに行くという一辺倒では語れないのだ。この展開には興奮せざるを得ず、失墜と再生の物語には感情移入できるし高揚感が凄まじいのだ。

しかしながらBorderlands 3 はこの高揚感あふれる怒涛のストーリーを上手く表現しきれていないと言わざるを得ないのが残念なところだ。それらの奥に秘めたキャラクターが持つ重大な感情が隠蔽されているとでも言うのだろうか。大変な目にあっているはずのリリスも多くを語らず無気力になった無能に見えてしまう。

悪役を徹底的に悪役として描く手法はこのシリーズの特徴で良い点だと思う。前作のハンサムジャックも今回のカリプソツインズも、通信がイチイチ鬱陶しいしやっていることは徹底的なクズでプレイヤーとしても本気でイライラしてしまうのだ。これは「敵を殺すことへの罪悪感」をかき消して「タノシイ」プレイフィールを追求するがための狙いであることは明白だ。しかし今回のストーリーでは、悪役として完璧過ぎるカリプソツインズに圧倒されすぎていて、物語の「良い側面」までもがかき消されてしまい表面上とても見えづらくなっているのだ。このためにおそらく今作でも重要な「エヴァというわんぱく少女の成長劇」というプロットが少し分かりづらくなっている。更にもっと分かりにくいのが、「失墜と再生」の立場をもろに請け負っているリリスが、ただ力を取り戻した後に感動のための犠牲を安請負したというように映ってしまうのだ。エンディングに差し掛かった時にもやもや感を感じてしまい「もうちょっとなんかあったやろ」と呟いてしまった。ストーリーの好みでいうとやはりBorderlands 2には劣ってしまうだろう。

 

この点は残念な部分であったが、今後もイベントやDLCで追加のストーリーが楽しめるはずだ。エヴァの今後も気になるし、必ず帰ってくると念を押して強調されたリリスの復活もあることだろう。ゲームのコアの部分はとてもタノシイので、ボーダーランズファンならきっと楽しめる事だろう